Bourbon
タイ最北端のチェンライ(Chian Rai)県は、タイにおける高品質アラビカコーヒーの最大級の生産地です。
近年、かつて主流だった耐病性品種(カティモール)から、伝統的で風味に優れたブルボン(Bourbon)種やその変異種へのシフト、さらには品種改良や独自の精製技術による品質の飛躍的向上が注目を集めています。
チェンライ産ブルボン種の「品種改良・特徴」と「品質」の最新動向は以下の通りです。
1. 品種改良と栽培のシフト
• 伝統的アラビカ種への回帰と選別:
タイのコーヒー栽培はアヘン撲滅のための王室プロジェクト(ロイヤルプロジェクト)から始まり、当初は病気に強い「カティモール」が広く推奨されていました。しかし近年、スペシャルティコーヒー市場の成長に伴い、より豊かな風味を持つブルボン種(レッドブルボン、イエローブルボンなど) や、カトゥアイ種 などを選別して栽培する小規模農家(アカ族などの山岳少数民族)がチェンライのドイチャン地区やドイパンコン地区で増えています。
• タイのローカル改良品種「チェンマイ(Chiang Mai)」:
チェンライでも広く導入されている品種改良の成功例として、「チェンマイ」種があります。
これは、世界的に香味の評価が高いケニア由来の「SL28(ブルボンの系統)」 と「カトゥーラ」に、耐病性のある「カティモール」を交配させたタイの独自品種です。ブルボン系の繊細な風味特性(香味)を維持しつつ、病気への強さを兼ね備えた画期的な品種改良として品質を底上げしています。
2. 品質の特徴とテロワール
• 優れた高地環境:
チェンライの主要産地は標高1,000m〜1,500mの険しい山岳地帯に位置します。昼夜の激しい寒暖差と豊かな森林の陰(シェードグロウン)のおかげで、コーヒーチェリーがゆっくりと成熟し、複雑な糖分と芳香化合物をしっかり蓄えます。
• 風味のクリーンさと甘み:
チェンライ産のブルボンや派生品種は、東南アジア産コーヒー特有の力強さに加え、非常に滑らかなシロップのような甘み、ハーブやフルーツを思わせる透明感のある酸味(クリーンカップ)を併せ持っているのが最大の品質特徴です。
3. 品質向上の背景(高度な精製)
タイ国内でのスペシャルティコーヒー需要の爆発的な高まりを受けて、チェンライの精選所(ウェットミル)では世界最先端の精製技術が導入されています。
• 先進的な発酵プロセス: 単なるウォッシュド(水洗式)だけでなく、独自の酵母を用いたハイブリッド発酵、乳酸菌を利用したアナエロビック(嫌気性発酵)、カーボニックマセレーションなどが積極的に行われ、ブルボン種の持つポテンシャルを最大限に引き出しています。
• 聖なる泉の水: チェンライの有名ブランド(ブルーコフ社など)では、地元のパワースポットである「聖なる泉」の天然水で精選を行っており、これが雑味のない透き通るような品質(サイアム・ブルームーンなどで有名)を支えています。